朝3時30分に起きて、販売所に届く新聞をトラックから降ろし、すぐに広告やチラシをまとめたものを、指サックという滑らないゴムを指に着けて、新聞に挟む作業をします。チラシの多いお正月前後が、一番分厚く重い新聞となります。自転車の前後の籠にぎゅうぎゅうに新聞を詰め、自転車でよろよろしながら配達に行っていました。約2時間の配達を終え、朝食を済ますと電車で片道1時間かけて大学に通い、夕方5時頃から夕刊の配達に行っていました。 配達中には、朝真っ暗なために家の門に頭をぶつけて血だらけになったり、マンションやアパートの階段を踏み外して膝を何度もぶつけたり、突風にあおられ自転車で転倒し、怪我をしたり新聞が散乱したりと苦難も多くありました。 精神的に一番辛かったのは、「拡張」という新聞の勧誘でした。夕刊配達後、夕食を食べ終えると、疲れて眠いのをこらえて先輩と一緒に自分の担当区域の家を1件1件、新規に新聞を取ってもらえるようにお願いして回るのです。全く知らない人の家を訪問し、時には嫌がられ怒鳴られても、何度もお願いすることは心が折れそうでした。ある日、家の人に怒鳴られながらも玄関先で先輩が土下座までして頼み込んでいる姿を見て、そこまでやる必要はないだろうと思い、大変悲しい気持ちになったこともありました。仲間や先輩の中には、余りの辛さに大学を辞めたり、休学したりする人もいました。
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