校長室から__

学校だより9月号 修学旅行が最高の思い出になるように 校長 相澤 顕



体育祭開会式より

 卒業生に学校生活で最も強く印象に残っていることをたずねると、返ってくる答えで圧倒的に多いのが、修学旅行の思い出です。普段訪れることのない地方を訪問し、日々の学校生活では経験できない体験を仲間と一緒にすることにより、忘れがたい思い出を作ることができるからでしょう。3年生は延期されていた2泊3日の関西方面への修学旅行が、10月6日から予定されています。3年生の皆さんは、今まさにワクワクしていることと思います。私の思い出を紹介します。



 私は、旅行カバンを持っていませんでした。そこで、父親に相談すると「これ貸してやるよ。」と言って渡されたのは、ぼろぼろに皮革がはがれかけた、いかにも年季の入ったカバンでした。「うん。」とは答えたものの「親父くさい、カッコ悪いカバンだから嫌だ。」と心底思いました。
 当時、ほとんどの友達が「ナイキ」や「プーマ」などの自分用のかっこいいカバンを持っていました。そこで、母親に「旅行カバンを買ってほしい。」と懇願しました。母親の返答はいつも決まって「父親に頼みなさい。」でした。仕方なく、父親に頼んでみたものの、「何でこのカバンが嫌なのだ、理由は何だ。」と言われると、言葉が出ませんでした。確かに、使うには問題はないので、カッコ悪いという理由は言えませんでした。
 それからというもの、修学旅行へ行くのを嬉しいとは思えなくなり、気分はだんだん滅入っていき、母親に不満をぶちまけるような日々が続きました。そして、意を決して修学旅行五日前の土曜日の早朝、父親の枕元に正座して「理由は言えないけど、頼むから旅行カバンを買ってほしい。」と訴えました。(涙ぐんでいたかも?)それでも、父親は黙ったままでした。「もう駄目だ。」そう思い、私は諦めました。
 翌日の日曜日、急に父親に呼ばれ「車に乗れ。」と言われ、約1時間後、十日町市のあるスポーツ店に着きました。そして、父親が「どんなカバンが欲しいのだ。」と言いました。私は「え、カバン買ってくれるのか。」と驚きました。値段を見ると気に入ったカバンはかなり高く、遠慮してどのカバンかはっきり言えないでいると、父親は「これがいいか。」と指差しました。そのカバンは私が1番欲しかった「マクレガー」社製のかっこいい旅行カバンでした。かなり高くて驚きましたが、なぜか父親は買ってくれました。(当時、大変貧しかったのに、私の気持ちを思い、きっと無理して買ってくれたのでしょう)
 父親は終始無言でしたが、帰りの車中で、私は父親への感謝と楽しい修学旅行を思い描いて、気分はハイテンションだったことを今も覚えています。



 自分が親の立場になり、当時の父親の気持ちがじんわりと理解できますし、たぶん母親が上手に間を取り持ってくれたのだと思います。親の愛情があってこそ楽しい修学旅行になったのだと、改めて感謝の思いがこみ上げてきます。
 3年生は、新型コロナウイルス感染症の影響で、小学校の卒業式も中学校の入学式も通常通りできず、中学校生活は様々な制約を受け、困難を経験してきました。だからこそ、修学旅行は予定通り実施し、最高の思い出を作ってもらいたいと心から思います。それは、修学旅行に向けて準備してくださる親御さんの願いでもあります。卒業まであと半年。学年の仲間との絆や団結を深め、かけがえのない素晴らしい修学旅行にしましょう。


2022年10月04日